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建設業 2024年問題の罰則について

はじめに

2024年に直面する建設業界の「2024年問題」には、働き方改革関連法の施行、人手不足の深刻化、技術革新とデジタル化の遅れ、建設資材の価格高騰などがあります。これらの問題に対応しない場合、建設業者はさまざまな罰則に直面する可能性があります。本記事では、これらの罰則について詳細に説明し、具体例を交えて対策を考察します。

 

1. 働き方改革関連法の罰則

 

労働時間の上限規制違反

2024年4月1日から、中小企業にも働き方改革関連法が完全施行されます。この法律は、労働時間の上限を厳格に規定しており、違反した場合には重い罰則が科される可能性があります。建設業界では、長時間労働が常態化しているため、特に注意が必要です。

具体例として、ある建設会社では、社員の労働時間が1日12時間、週に6日間働くのが常態化していました。しかし、法律の施行により、1日8時間、週40時間以内に労働時間を抑える必要があります。この会社が労働時間の上限を超えた場合、以下の罰則が科される可能性があります。

 

  • 法定労働時間の違反:

    労働基準法第32条に基づき、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

 

  • 時間外労働の上限違反:

    時間外労働の上限(1か月45時間、1年360時間)を超えた場合には同様の罰則が適用されます。

 

 

有給休暇の取得義務違反

働き方改革関連法では、年次有給休暇の取得が義務化されています。従業員に対して一定の日数の有給休暇を取得させなければならず、これを怠った場合にも罰則が科されます。

具体例として、ある建設会社では、有給休暇の取得率が非常に低く、多くの社員が年間5日以上の有給休暇を取得していませんでした。この場合、会社は以下の罰則を受ける可能性があります。

 

  • 年次有給休暇の未取得:

    労働基準法第39条に基づき、年次有給休暇の取得義務を怠った場合には、30万円以下の罰金が科されます。

 

対策

労働時間の管理や有給休暇の取得を徹底するためには、以下の対策が有効です。

 

  • 労働時間管理システムの導入:

    労働時間を正確に管理するためのシステムを導入し、リアルタイムで社員の労働時間を把握する。例えば、タイムカードのデジタル化や労働時間の自動記録システムを活用することで、手作業による記録ミスを防ぐことができます。

 

  • シフト制の導入:

    労働時間を均等に分散させるために、シフト制を導入する。これにより、特定の社員に負担が集中するのを防ぎ、全員が均等に休息を取れるようになります。例えば、早番・遅番のシフトを設定し、週ごとにローテーションすることで、社員の負担を軽減します。

 

  • 休暇取得促進キャンペーン:

    有給休暇の取得を促進するための社内キャンペーンを実施し、社員に休暇を取る重要性を周知する。例えば、休暇を取ることでリフレッシュし、業務効率が向上する事例を紹介することで、休暇取得への抵抗感を減少させます。

 

 

2. 建設業法の罰則

無許可営業

建設業法に基づき、一定規模以上の建設工事を行う場合には許可が必要です。無許可で営業を行った場合には、厳しい罰則が科されます。

具体例として、ある建設業者が許可を取得せずに大規模な建設プロジェクトを請け負った場合、無許可営業として以下の罰則が科される可能性があります。

 

  • 無許可営業:

    建設業法第47条に基づき、無許可で建設業を営んだ場合には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。また、法人の場合は1億円以下の罰金が科されることもあります。

 

許可条件の違反

許可を受けた建設業者が、許可の条件を満たしていない場合や、虚偽の申請を行った場合にも罰則が適用されます。

具体例として、ある建設会社が虚偽の申請を行って許可を取得した場合、発覚した際には以下の罰則が科される可能性があります。

 

  • 虚偽申請:

    建設業法第100条に基づき、虚偽の申請や報告を行った場合には、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。

 

対策

無許可営業や許可条件違反を防ぐためには、以下の対策が重要です。

 

  • 許可取得の徹底:

    建設業を営むために必要な許可を確実に取得し、許可条件を遵守する。例えば、新規プロジェクトを受注する際には、必要な許可が揃っているかを再確認する。

 

  • 法令遵守の教育:

    社員に対して法令遵守の重要性を教育し、違反行為を防ぐ。例えば、定期的に法令に関する研修を実施し、最新の法改正や規制に関する情報を共有する。

 

 

3. 安全衛生規則の罰則

建設現場での安全衛生に関する規則も厳しく規定されています。これらの規則に違反した場合には、重い罰則が科される可能性があります。

 

労働安全衛生法違反

建設現場での労働者の安全を確保するための措置を怠った場合には、労働安全衛生法に基づく罰則が適用されます。

具体例として、ある建設現場で安全措置が不十分なために労働災害が発生した場合、以下の罰則が科される可能性があります。

 

  • 安全措置の不履行:

    労働安全衛生法第119条に基づき、安全措置を講じなかった場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

 

  • 重大災害の発生:

    重大な労働災害が発生した場合には、さらに重い罰則が科される可能性があり、具体的には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。

 

 

対策

労働安全衛生規則を遵守し、安全な労働環境を確保するためには、以下の対策が必要です。

 

  • 安全教育の実施:

    現場の労働者に対して定期的に安全教育を実施し、安全意識を高める。例えば、新入社員研修や定期的な安全講習を行い、現場での安全行動を徹底させる。

 

  • 安全設備の整備:

    現場に必要な安全設備を整備し、労働者が安全に作業できる環境を提供する。例えば、安全ネットやヘルメット、保護具などの適切な装備を提供し、使用を義務付ける。

 

 

4. 建設資材の不正取引

建設資材の調達において、不正取引や品質基準を満たさない資材の使用が発覚した場合にも罰則が適用されます。

 

不正取引の罰則

不正な手段で建設資材を調達した場合には、詐欺罪や贈収賄罪などが適用される可能性があります。

具体例として、ある建設会社が低品質な資材を使用し、プロジェクトのコストを不正に削減しようとした場合、以下の罰則が科される可能性があります。

 

  • 詐欺罪:

    刑法第246条に基づき、詐欺行為を行った場合には、10年以下の懲役が科されます。

 

  • 贈収賄罪:

    公務員などに対する贈収賄が発覚した場合には、刑法第197条に基づき、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。

 

 

対策

建設資材の不正取引を防ぐためには、以下の対策が重要です。

  • 透明な調達プロセスの確立:

    資材の調達プロセスを透明化し、公正な取引を確保する。例えば、複数のサプライヤーからの見積もりを比較検討し、最適な取引を選択する。

  • 品質管理の徹底:

    資材の品質を厳しく管理し、規定の品質基準を満たしているかを確認する。例えば、資材の検査体制を整備し、品質不良の資材が使用されないようにする。

 

結論

2024年問題に関連する建設業界の罰則は、多岐にわたります。しかし、適切な対策を講じることで、これらの罰則を回避し、持続可能な成長を実現することが可能です。労働環境の改善、法令遵守の徹底、安全衛生管理の強化、透明な取引の確保など、多岐にわたる取り組みが求められます。企業はこれらの対策を早急に実施し、2024年以降も競争力を維持することが重要です。

具体的には、労働時間管理システムの導入やシフト制の導入、外国人労働者の活用や高齢者の再雇用、BIMやドローン、AIの活用、価格変動リスクの分散や代替材料の検討など、具体的な施策を講じることが求められます。これらの取り組みを通じて、企業は競争力を強化し、持続可能な成長を実現することが期待されます。

この記事を書いた人

松上 隆良

行政書士まつがみ事務所 代表 松上隆良
取扱業務は、許認可業務をメインとし、特に【建設系】を得意業務として対応している。建設業許可、経営事項審査、公共工事入札の対応に特化している。他にも、産廃収集運搬、解体工事業登録、登録電気工事業者、自動車登録、出張封印なども対応している。
スピーディーな対応、レスポンスとお客様目線にたった分かりやすい説明が好評。

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