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【ニュース】第3次担い手3法を読み解く・1/新ルールが交渉の武器に

【建設工業新聞 6月 14日 1面記事掲載】

 

 

◇労務費見積もり規制など、当事者として使いこなせ

 

 

建設業法と公共工事入札契約適正化法(入契法)、公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)、測量法の改正による「第3次担い手3法」が成立し、新たな法規制に伴う建設取引の新ルールの運用に向けた検討が本格化する。最長で1年半後の施行までに国がガイドラインなどで詳細な運用方法を示す方向。建設取引の当事者の間では現場レベルで新ルールを十分に理解し対応するための準備も必要だ。今回講じる規制措置の実効性の確保などが議論された国会審議を振り返りながら、法施行を見据えた今後の動きを探った。

 

 

7日成立の改正業法・入契法に盛り込まれた新ルールは、総価一式の請負契約を前提とした従来の商慣習を大きく変えるインパクトをもたらす。「労務費に関する基準(標準労務費)」をベースとした見積もり・契約規制、資材価格高騰などの「恐れ(リスク)情報」の通知を起点とした契約変更協議の円滑化策などは取引関係者らに従来なかった対応を迫る。

 

 

主に業法への追加規定は▽3カ月以内▽6カ月以内▽1年半以内-の3段階で施行。国土交通省は各規定の施行に合わせ、ガイドラインや政省令、建設工事標準請負契約約款の整備・改正を進める。標準労務費は9月までに中央建設業審議会(中建審)に勧告権限が付与され、施行後すぐにも中建審の下に作成主体となるワーキンググループが立ち上がる。受注者によるリスク情報の通知義務化は12月までに施行し、それまでに具体的な情報提供の範囲や内容を詰める。

 

 

国会審議では特に適正な労務費の行き渡りで、新ルールの実効性を問う声があった。国交省は建設Gメンの実地調査などを通じ違反行為の取り締まりを強化する考えを示しつつ、その前段として受発注者間と元下間で新ルールが適切に機能する必要性を指摘。塩見英之不動産・建設経済局長は答弁で「まずは契約当事者間で新ルールにのっとった(価格などの)交渉に努めていただく」と強調した。

 

 

国交省は見積もり規制で取り締まる「著しく低い労務費」の具体的な数値は明示せず、違反行為の事例集などで判断の目安を提示する方向で検討している。民間を含む発注者や下請などの立場の違いを踏まえ、交渉時に取るべき行為も整理しガイドラインで周知。中小事業者などの相談を受ける体制構築も検討する。塩見局長は、それぞれの事業者が自ら当事者として新ルールを理解し守るため「交渉の場で使いこなしていただくことが重要」と話す。

 

 

改正業法では、注文者に対象を限っていた「不当に低い請負代金」と「著しく短い工期」の禁止を受注者にも導入し、受注者側への規制を強化した。ただ見方を変えれば、受注競争にさらされ、望まない形で無理な価格・工期を強いられてきた受注者や下請にとって、発注者や元請との交渉の場で法令順守を盾に正当な主張が可能になる。こうした新ルールの役割を、塩見局長は「交渉に当たってのつっかい棒」と表現する。

 

 

新ルールを使いこなせば、取引関係で弱い立場の者でも交渉を有利に進めることができる「武器」となる。国交省は関係業界団体とも連携し、実践的なノウハウを含めた周知を図る考え。注文者と受注者の双方で互いに新ルールを順守する意識の浸透が鍵となる。

 

 

 

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出典元:wisePDS

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